2025年には、訪日外国人数が4,200万人に増加し、消費額も8.5兆円に達すると予想されています。観光は地方創生の鍵であり、地方が訪日外国人の需要を取り込むためには、空港や港湾などのゲートウェイの整備や、日本版DMOを活用した観光地経営の推進というハード・ソフト両面での取り組みが重要です。コロナ前を上回る過去最高の訪日数が予想されるなか、インバウンド需要を逃さず宿泊予約へと導くために、2024年のデータを分析しながら2025年旅行トレンドと合わせてご紹介していきます。
国別総支出額
2024年4月から6月期の訪日外国人旅行消費額は2兆1,370億円と推計され、これは2023年同期比で73.5%、2019年同期比で68.6%の増加を示しています。国別の総支出額では、中国が1位を獲得し、2023年でほぼ同じだった台湾は3位となり、円安の影響で米国が2位にランクインしました。続いて韓国と香港が入り、この5カ国は他の市場を大きく上回っています。コロナ前の2019年と比べると、各国の消費額が増えており、訪日旅行需要の高まりが伺えます。上位5ヵ国をしっかり押さえつつ、他国の集客にも力を入れることが重要ですね。
旅行者数
2024年4-6月期の旅行者数1位は、韓国で約208.8万人でした。2位は中国で約150.2万人。その後150万人ラインに下がり、台湾で約144.6万人、アメリカ約77万人、香港約64.6万人と続きます。消費額に続き、旅行者数でみても上位5ヵ国の顔ぶれは変わりませんでした。
訪日外国人の消費動向、2024年1-3月期報告書によると、日本への来訪回数では「1回目」が31.6%で最も多く、次いで「4-9回目」が24.8%となっています。国籍・地域別では、イタリア、スペイン、カナダの旅行者において「1回目」の割合が60%を超えており、リピーターが少ない傾向が見られます。一方、台湾、香港、シンガポールの旅行者は「1回目」の割合が約10%と、他の国籍・地域に比べてかなり低くなっています。
前回の来訪時期に関しては、「今回が初めて」を除くと、「1年以内」の旅行者が32.6%と最も多く、再訪問の増加が伺えます。特に香港とシンガポールでは「1年以内」の割合が50%を超えており、他の国籍・地域に比べて際立った高さを示しています。このデータは、訪日外国人の訪問パターンの変化を示しており、特にアジア圏からの旅行者においてリピート訪問が増えていることが明らかです。
一人当たりの旅行支出と平均宿泊数
訪日外国人1人当たりの旅行支出は、2024年4月から6月のデータによると、フランスが最も高く、平均43.7万円、次いで英国が43.2万円、そしてオーストラリアが42.2万円となっています。これに対し、最も旅行支出が低いのは韓国で、10.6万円です。平均泊数についても、韓国は3.4泊と最も短く、一方でフランスは15.7泊、ドイツとスペインはそれぞれ15.5泊と最も長い結果となりました。
次に、平均宿泊日数で国を2つのグループに分けてみました。緑丸は3〜10泊で、主にアジア圏の国々が該当し、オレンジ丸は11〜16泊で欧米豪の国々が多く見られます。特に、約1か月の有給休暇を取得可能なヨーロッパでは宿泊日数が長いです。今年のデータも昨年同様に、欧米豪の旅行者はアジア圏に比べて宿泊日数が長い傾向が確認されました。また、フライト時間に関しても、欧米豪の国々は10時間以上のフライトが必要であり、長距離移動が宿泊日数に影響を与えていることが示唆されています。
旅行客数が多い東アジア市場を引き続き重視するのは自然な流れですが、長期滞在が期待できる欧米豪の旅行者に対しても、専用のプランやサービスを提供する価値があります。特に、フランス、スペイン、オーストラリアの旅行者は、アジア圏とは異なる視点で集客することが可能です。
旅行支出の品目別データを見ると、宿泊費と交通費ではフランスが最も高く、飲食費ではドイツが最も高額です。娯楽・サービス費や買い物代に関しては、中国が依然としてトップに位置しています。このように、国ごとにお金を使う項目が異なるため、各国の消費傾向を踏まえた広告戦略が効果的でしょう。
2023年と比べると、すべての旅行者の支出が5万~10万以上増加しており、特に欧米豪の旅行支出の伸びが顕著です。フランスの旅行支出は昨年に引き続き最高水準を維持しており、今年も飛躍的な成長を見せています。また、英国やオーストラリアの支出も増加傾向にあり、欧米豪市場の重要性がますます高まっていることがわかります。
2025年の旅行トレンド × 各国の訪日旅行スタイル
2025年の旅行トレンドでは、持続可能性や本物の体験が注目されています。B Corp認証を受けた旅行ブランド向けのPR・コンテンツ代理店であるレモングラスが発表した年次レポートは、旅行業界の変化を示す主要な傾向を紹介しています。
1. オーバーツーリズム対策:観光地が過剰な観光を避け、持続可能な取り組みを強化。
2. フロンティアトラベル:混雑を避け、秘境やユニークな体験を求める旅行。
3. 豆腐観光:環境に配慮し、持続可能な選択を重視。
4. 持続可能性と倫理:エコフレンドリーな宿泊や移動手段が人気。
5. 本物の体験:地元の文化やコミュニティと深く関わる旅行が求められています。
旅行先や旅行会社は、こうした傾向に合わせた対応を進めています。
アジア向け訪日旅行
宿泊数は最短で4泊とあまり長くないアジア勢。しかし、距離的な理由でリピート確率は高め。そこで、魅力的なプランを多数打って新鮮さを売りに日本を満喫してもらってはいかがでしょうか。周辺観光紹介では、日本が誇るサブカル、漫画・アニメの舞台を取り入れたり、「ロケ地巡り旅」を含む過ごし方を紹介したりすることで旅行者の関心を得る可能性があります。また、人気過剰で混雑がひどかった「スラムダンク踏切」も、唯一無二であることは百も承知の上ですが、海をバックにした踏切は日本各地にあるはずです。「そっくり観光地」ということで、アピールしたら話題になるかもしれません。
欧米豪向け訪日旅行
宿泊数が10日以上と日本にどっぷり浸かる時間のある欧米勢。DBJ・JTBFの調査によれば、訪日旅行で体験したいことは、「伝統的日本料理」、「日本庭園の見物」、「自然や風景の見物」に「有名な史跡や歴史的な建築物の見物」。国連世界観光機関(UNWTO)が推奨しているガストロノミーツーリズムとノンアル旅をあわせて、健康になる、体の中からキレイになる日本の郷土料理体験を提供してみてはいかがでしょうか。また、大人気観光地「富士山」にそっくりな観光地として、地元のふるさと富士を紹介してみると地方のディープな部分に触れながら、日本の自然や風景をみる経験もでき、満足度も高くなるかもしれません。
まとめ
過去最多の訪日旅行数を記録した2024年。そのトレンドは2025年も継続することが予想されます。そしてその勢いを削がないためには、各観光地や宿泊施設が訪日旅行者が求めるプログラムや情報を用意し、さらに各国の旅行スタイルにあった形で提供することで、1回1回の訪日旅行に満足してもらうことが重要です。「魅力的なプランや施設の用意はできたけど、その情報の発信方法や集客方法がわからない。」そんなお悩みをお持ちの方はぜひ、お気軽にご相談ください。
インバウンド対策ラボ(アビリブグループ)では、多言語サイト制作・インバウンドプロモーション・インバウンドメディア掲載など各種インバウンド対策支援を行っています。
特にホテル旅館など宿泊・観光業の実績多数。これまでの知見を活かしたご提案をさせていただきます。