訪日外国人観光客の回復・増加により、インバウンド集客は多くの企業や自治体にとって重要なテーマとなっています。一方で、
「インバウンド広告とは何か」「どのような手法があり、どう選べばよいのか」と悩む方も少なくありません。
インバウンド広告は、単に外国語で発信するだけでは成果につながりません。訪日外国人が旅行前・旅行中・旅行後のどの段階で、どのメディアを使って意思決定しているかを理解し、行動フェーズに合った広告手法を選ぶことが重要です。
本記事では、2025年の日本で活用できるインバウンド広告を「デジタル」「オフライン」「体験型」の3つに分け、特徴や活用ポイントを解説します。
1. デジタル広告
デジタル広告とは、スマートフォンやパソコンを通じて、旅行前に検索・SNS・動画・旅行アプリなどで情報収集を行う海外ユーザーの意思決定プロセスに直接介入できる広告です。
以下では、代表的なデジタル広告を一つずつ解説します。
1.1 検索広告
検索広告は、訪日外国人が自ら情報を探しているタイミングで表示される広告です。検索結果に自然に溶け込むため、過度な売り込みよりも、課題解決や比較に役立つ内容が効果的とされます。インバウンドでは旅程作成や目的地選定といった意思決定の終盤に届きやすく、予約や来訪といった成果につながりやすい点が特徴です。
すく、予約や来訪といった成果につながりやすい点が特徴です。
【どこに表示されるか】
Googleなどの検索エンジンで、ユーザーが特定の言葉を検索したときに、検索結果の上部や下部に表示されます。
【インバウンド集客での役割】
すでに「日本に行きたい」「情報を探している」人に直接届くため、最も成約に近い広告です。
メリット
✔ 検索意図が明確なユーザーに届く
✔ 無駄打ちが少ない
✔ 効果測定がしやすい
デメリット
⊝ 競合が多いキーワードは費用が高くなる
⊝ 写真や動画での訴求は弱い
1.2 SNS広告
SNS広告は、旅行をまだ検討していない層にも自然に接触できる広告手法です。写真や短尺動画によって、日本の雰囲気や体験イメージを直感的に伝え、「いつか行きたい目的地」として印象づける役割を担います。即時の来訪促進よりも中長期的な認知形成に向いており、継続的な露出が重要です。特に動画は、訪日前ユーザーの感情に訴え、体験価値を効果的に伝えます。
【どこに表示されるか】
SNSのフィード、ストーリー、動画の途中など、ユーザーが日常的に見ている画面に自然に表示されます。
【インバウンド集客での役割】
旅行先を検討し始める前段階の認知づくりに強く、写真や動画で魅力を直感的に伝えられます。
メリット
✔ 視覚的に魅力を伝えやすい
✔ 潜在層にもリーチできる
✔ 拡散される可能性がある
デメリット
⊝ クリエイティブの質が成果を左右する
1.3 インフルエンサー広告
インフルエンサー広告は、第三者の体験共有として受け取られる点が特徴です。観光地の魅力だけでなく、移動のしやすさや現地の雰囲気など、公式情報では伝えにくいリアルな視点が伝わります。インバウンドでは特定の国・文化圏に強く訴求でき、短期成果よりも信頼形成や目的地選定への影響を重視する手法といえます。
【どこに表示されるか】
海外インフルエンサーのSNS投稿や動画として表示されます。
【インバウンド集客での役割】
「信頼」や「共感」を通じて、日本への興味を強く喚起します。
特に若年層や個人旅行者に効果的です。
メリット
✔ 広告感が弱く、信頼されやすい
✔ SNS拡散や口コミにつながりやすい
デメリット
⊝ インフルエンサー選定を誤ると効果が出ない
1.4 ディスプレイ広告・リターゲティング広告
ディスプレイ広告は認知を補強し、リターゲティング広告は一度生まれた関心を維持する役割を担います。比較検討段階のユーザーに対し、過去に見た日本の風景や体験を想起させることで、安心感や親近感を積み重ね、最終的な選択を後押しします。近年は静止バナーだけでなく短い動画も活用され、体験イメージや世界観を効果的に伝えられます。
【どこに表示されるか】
ニュースサイト、ブログ、旅行情報サイトなどのバナー広告枠。
【インバウンド集客での役割】
検討途中で離脱したユーザーを思い出させる広告として機能します。
メリット
✔ 認知の継続に強い
✔ 幅広いサイトで露出可能
デメリット
⊝ クリック率は低め
⊝ 強い訴求力は必要
1.5 旅行アプリ・地図アプリ内広告
旅行・地図アプリ内広告は、ユーザーが具体的な行動を起こす直前に表示される点が特徴です。広告は情報の一部として自然に組み込まれ、「広告を見る」というより「選択肢を比較する」感覚で受け取られます。インバウンド集客では、滞在中の時間配分や動線に直接影響を与えるため、来店・来訪などの即時的な行動につながりやすい実務的な広告手法です。
【どこに表示されるか】
Google Maps、Trip.com、Airbnbなどの旅行・地図アプリ内。
【インバウンド集客での役割】
「今どこに行くか」を考えている人に直接届く、行動直前型広告です。
メリット
✔ 来訪意欲が非常に高いユーザーに届く
✔ 実店舗や観光地と相性が良い
デメリット
⊝ 出稿媒体が限られる
⊝ 比較的費用が高い場合がある
1.6 位置情報連動型広告(ジオターゲティング)
位置情報連動型広告は、「誰に」よりも「どこにいるか」を基準に設計されます。表示される情報は極めて限定的で、シンプルかつ即行動につながる内容が求められます。インバウンドにおいては、偶然の発見や予定外の立ち寄りを生み出す力があり、周辺観光や飲食など、現地消費を喚起する役割を果たします。
【どこに表示されるか】
スマートフォンのアプリやブラウザ上。
【インバウンド集客での役割】
訪日中の「今すぐ行動」に直結します。
メリット
✔ 無駄が少ない
✔ 来店・来訪につながりやすい
デメリット
⊝ 配信エリアや期間が限定される
⊝ 長期的なブランディングには不向き
2. オフライン広告
オフライン広告は、インバウンド集客において単なる「認知拡大」を目的とした手法ではありません。
その本質は、日本に到着した訪日外国人の行動を、その場で具体的に変化させることにあります。
日本滞在中の訪日外国人は、情報を素早く判断し、細かい検索や比較を避けながら、「今いる場所からすぐ行ける選択肢」を優先する傾向があります。
2.1 交通広告(電車・駅・空港)
交通広告は、訪日外国人が日本の移動システムに慣れていない状態で繰り返し目にする点に価値があります。広告は情報として強く意識されるというより、「風景の一部」として刷り込まれていきます。インバウンド施策では、目的地名やブランド名を記憶に残すことに特化し、後の検索や行動につながる“きっかけ”を作る役割を担います。
【どこに表示されるか】
空港、電車内、駅構内、改札周辺、通路、エスカレーター付近など、移動導線上に表示されます。
【インバウンド集客での役割】
「今、日本にいる」という現実と結びつくため、行動を起こす直前の意思決定に影響します。
メリット
✔ 訪日外国人との接触率が非常に高い
✔ 繰り返し視認され記憶に残りやすい
✔ デジタル広告では届かない層にも有効
デメリット
⊝ 効果測定が難しい
⊝ 即時の成果は見えにくい
2.2 屋外広告
屋外広告は、短時間での視認を前提とするため、情報量より分かりやすさが重視されます。インバウンド向けでは言語に頼らず、場所や魅力が一目で伝わる表現が効果的です。観光地周辺ではその場での選択肢として認識されやすく、行動を即時に促します。近年はデジタルサイネージによる動画表現も増え、多国籍な観光客に対して短時間で強い印象を残せる点が特長です。
【どこに表示されるか】
繁華街、観光地周辺、ホテル周辺、交差点、商業施設入口など。
【インバウンド集客での役割】
スマートフォンを取り出す前の段階で、選択肢として認識させる役割を担います。
メリット
✔ 直感的に理解されやすい
✔ 言語の壁を超えやすい
✔ 地域ブランディングに強い
デメリット
⊝ 詳細情報は伝えられない
⊝ 設置場所により効果差が大きい
2.3 紙媒体
紙媒体はデジタル全盛の中でも、訪日外国人の行動を静かに支える存在です。電波環境や通信状況に左右されず、何度も見返される点が強みです。インバウンドでは、回遊性を高めたり、予定に組み込まれる可能性を高めたりするなど、滞在全体の動きを設計する役割を果たします。
【どこに表示されるか】
空港、ホテル、観光案内所、交通拠点、商業施設などで配布・設置されます。
【インバウンド集客での役割】
滞在中の行動計画に直接入り込み、回遊を促進します。
メリット
✔ 保存されやすい
✔ 行動計画に使われやすい
デメリット
⊝ 最新情報の更新が難しい
⊝ デザイン・翻訳品質が成果を左右する
3. 体験型広告
体験型広告は、広告を体験として設計することで即時的な集客効果は限定的ながらも、記憶や感情に深く残り、その後の意思決定に長期的な影響を与える手法です。
3.1 イベント・展示・ポップアップ施策
イベント型施策は、情報提供ではなく「体験」を通じて理解を深める点が特徴です。短時間でも強い印象を残し、感情と結びついた記憶として残ります。インバウンド集客では、帰国後の口コミやSNS発信につながりやすく、間接的に次の訪日需要を生み出す効果があります。
【どこに表示されるか】
空港、商業施設、観光地、海外展示会、観光イベント会場など。
【インバウンド集客での役割】
「行ってみたい」から「行ったことがある感覚」へと心理を一段階進めます。
メリット
✔ 強い印象と記憶を残せる
✔ SNS拡散と相性が良い
デメリット
⊝ 準備・運営コストが高い
⊝ 短期間施策になりやすい
3.2 AR・VRを使った体験型広告
AR・VRとは、スマートフォンや専用デバイスを通じて、現地を訪れたかのような疑似体験を提供できる技術です。特に距離や文化的ハードルを感じやすい海外ユーザーに対して、不安を軽減し、具体的なイメージを持たせる役割を果たします。インバウンド施策では、目的地選定の初期段階で差別化を生みやすい手法です。
【どこに表示されるか】
Webサイト、アプリ、展示スペース、イベント会場など。
【インバウンド集客での役割】
訪日前に「体験した気分」を作り、選択肢として強く印象付けます。
メリット
✔ 体験価値が高い
✔ 若年層・デジタル層に強い
デメリット
⊝ 技術コストが高い
⊝ 全世代向きではない
3.3 自治体・企業連携プロモーション
連携型プロモーションは、単体では届かないスケールや信頼性を確保できる点が強みです。公的機関や大手企業が関与することで、情報の信頼度が高まり、海外ユーザーにも安心感を与えます。インバウンドでは、広域観光や長期滞在の促進など、個別事業者では難しい目的を実現する役割を担います。
【どこに表示されるか】
航空会社、鉄道会社、OTA、自治体キャンペーンなど。
【インバウンド集客での役割】
単体では届かない層に対して、信頼性の高い情報として届く点が強みです。
メリット
✔ 信頼性が高い
✔ 大規模展開が可能
デメリット
⊝ 意思決定に時間がかかる
⊝ 自由度が低い場合がある
3.4 招請旅行 (ファムトリップなど)
招請旅行(ファムトリップ)は、メディア関係者やインフルエンサー、旅行事業者を現地に招き、実際の体験を通じて魅力を発信してもらう手法です。広告主自身ではなく第三者の視点で発信されるため、情報に信頼性が生まれます。実体験に基づく発信は「リアルな体験談」として受け取られやすく、地域の魅力を深く、ストーリー性をもって伝えたいインバウンド施策に有効です。
【どこに表示されるか】
広告枠に表示されるのではなく、招いた旅行会社、メディア、インフルエンサーの発信(記事、商品造成、SNS投稿など)として露出します。
【インバウンド集客での役割】
第三者の視点による発信のため信頼性が高く、中長期的に訪日客を生み出す仕組みづくりに貢献します。
メリット
✔ 信頼性が非常に高い
✔ 継続的な集客につながりやすい
✔ 旅行商品化に直結する場合がある
デメリット
⊝ 成果が出るまで時間がかかる
⊝ 招請対象の選定が成果を大きく左右する
まとめ
インバウンド広告で成果を出すために重要なのは、単に広告手法を選ぶことではなく、訪日外国人の行動フェーズに合わせて適切に使い分けることです。
★ 旅行前に知ってもらう → デジタル広告
★ 滞在中に思い出させる → オフライン広告
★ 記憶に残し、選ばせる → 体験型広告
この設計を元に、段階ごとに広告手法を使い分けることが、2025年以降のインバウンド集客における成果創出の鍵となります。
インバウンド対策ラボ(アビリブグループ)では、 SNSマーケティング支援 ・ アビリブインフルエンサー ・ インバウンドプロモーション ・ インバウンド広告のサービスなどのインバウンド対策支援を行っています。特にホテルや旅館など、宿泊・観光業の実績多数。これまでの知見を活かしたご提案をさせていただきますので、まずはお気軽にご相談ください。







