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訪日タイ市場トレンド分析【都道府県別ランキング】

著者: インバウンド対策ラボ編集部

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インバウンドデータ・動向

訪日タイ市場トレンド分析【都道府県別ランキング】

近年、タイからの訪日旅行市場は着実な成長を続けており、東南アジア市場の中でも特に重要な位置を占めています。ビザ要件の緩和、LCC路線の拡充、SNSや動画メディアを通じた日本観光情報の拡散などを背景に、訪日タイ人観光客の旅行スタイルは「都市集中型」から「周遊・体験重視型」へと徐々に変化しつつあります。

本記事では、JNTO「タイ市場基礎データ」および観光庁「訪日外国人消費動向調査(2023年)」を基に、タイ人観光客の都道府県別訪問率ランキングを整理し、上位エリアの特徴や人気要因を分析します。あわせて、今後の地方誘客に向けた示唆についても考察します。

1. 都道府県別訪問率ランキング概要

JNTO「タイ市場基礎データ」および観光庁「訪日外国人消費動向調査(2023年)」によると、観光・レジャー目的で訪日したタイ人のうち、訪問率が10%を超えた都道府県は以下の通りです。

訪問率10%超の都道府県(2023年・2024年データ)

★東京都:54.3%

★千葉県:44.4%

★大阪府:33.9%

★京都府:22.7%

★山梨県:15.4%

★福岡県:12.5%

これらの都道府県が、タイ人訪日客の主要な訪問先となっています。以下では、上位エリアについて詳細に分析します。

出典:JNTO「タイ市場基礎データ」、観光庁「訪日外国人消費動向調査(2023年)」、JNTOタイ市場レポート

https://www.jnto.go.jp/statistics/market-info/thailand/market-basic-thailand.html

https://www.jnto.go.jp/statistics/market-info/thailand/thailand02.pdf

2. 上位都道府県別 詳細分析

第1位:東京都(訪問率54.3%)

訪問率・順位データ 東京都は訪日タイ人の半数以上が訪れる最重要エリアであり、訪問率54.3%は圧倒的な数値です。団体旅行、個人旅行を問わず、訪日旅行の起点として機能しています。

なぜタイ人に人気なのか
◎アクセスの良さ
バンコクから成田空港・羽田空港への直行便が多数運航されており、LCC(エアアジア等)も就航しています。2014年以降のLCC相次ぐ就航により、訪日旅行の低廉化が進んだことが、東京への訪問増加に大きく寄与しています。
◎ショッピングの聖地
銀座、渋谷、新宿、原宿などの繁華街が集積し、日本製品の購買意欲が高いタイ人にとって理想的な買い物環境が整っています。免税制度の浸透も購買を後押ししています。
◎多様な観光コンテンツ
浅草寺などの歴史的建造物、スカイツリーなどの現代的ランドマーク、秋葉原のアニメ・オタク文化、築地・豊洲の食文化など、多様な魅力が凝縮されています。
◎SNS・動画での露出

東京は最もYouTubeやSNSで取り上げられる日本の都市であり、疑似体験型の情報が豊富に存在します。タイ人インフルエンサーによる東京紹介コンテンツも多数制作されています。

東京は日本の玄関口として、初回訪問者の必須訪問先です。一方で、リピーターにとっても、最新トレンド、季節限定イベント、新規オープン施設などの新しい魅力が常に更新されるため、繰り返し訪れる価値があります。
東京近郊の日光、川越などへのアクセスも良好で、広域周遊の拠点としても機能しています。

出典:JNTO「タイ市場基礎データ」

https://www.jnto.go.jp/statistics/market-info/thailand/thailand02.pdf

第2位:千葉県(訪問率44.4%)

訪問率・順位データ 千葉県は訪問率44.4%で第2位です。この高い訪問率は、東京ディズニーリゾート(TDR)の存在と、成田空港を起点とした周遊ルートに起因しています。

なぜタイ人に人気なのか

◎東京ディズニーリゾート(TDR)の圧倒的人気
タイ国内にはディズニーパークが存在しないため、訪日旅行の目玉として位置づけられています。家族旅行や友人グループでの訪問が多くなっています。
◎成田空港の玄関口機能
バンコクからの多くの便が成田空港に到着するため、千葉県は訪日旅行の最初または最後の滞在地となりやすくなっています。空港周辺のホテルや、成田山新勝寺などの観光スポットも訪問できます。
◎東京へのアクセスの良さ
千葉県は東京に隣接しており、東京観光と組み合わせやすい立地です。

千葉県の訪問率44.4%という数値は、TDRという単一の強力な観光施設の吸引力を示しています。TDRを訪問する際、多くのタイ人観光客は1日以上を費やすため、千葉県内での宿泊も発生します。
成田空港周辺の宿泊施設は、タイ人向けのサービス(タイ語対応、タイ料理の提供等)を強化することで、さらなる需要獲得が期待できます。

出典:JNTO「タイ市場基礎データ」
https://www.jnto.go.jp/statistics/market-info/thailand/thailand02.pdf

第3位:大阪府(訪問率33.9%)

訪問率・順位データ 大阪府は訪問率33.9%で第3位です。関西エリアの玄関口として、また独自の都市文化を持つ観光地として、タイ人に人気が高くなっています。

なぜタイ人に人気なのか
◎ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の存在
テーマパークを好むタイ人にとって、TDRと並ぶ必訪スポットです。
◎関西国際空港へのLCC直行便
バンコクから関西国際空港への直行便が就航しており、チェンマイからの便も運航されています。LCCの利用により、関西を起点とした旅行が手頃な価格で実現できます。
◎道頓堀・心斎橋のショッピング・グルメ
道頓堀の象徴的な看板群はSNS映えスポットとして人気が高くなっています。心斎橋筋商店街では免税ショッピングが楽しめ、たこ焼き、お好み焼き、串カツなど大阪特有のグルメも体験できます。
◎京都・奈良への近接性
大阪は京都府(訪問率22.7%、第4位)や奈良県への日帰り観光の拠点となります。関西周遊の中心として機能しています。


大阪は「関西周遊の拠点」としての役割が大きいと言えます。大阪に宿泊しながら、京都の寺社仏閣、奈良の鹿公園、神戸の異国情緒を日帰りで楽しむスタイルが一般的です。また、大阪の庶民的で活気ある雰囲気は、タイ人にとって親しみやすく感じられます。


出典:JNTO「タイ市場基礎データ」

https://www.jnto.go.jp/statistics/market-info/thailand/thailand02.pdf

第4位:京都府(訪問率22.7%)

訪問率・順位データ 京都府は訪問率22.7%で第4位です。日本の伝統文化と歴史を体験できる場所として、タイ人に根強い人気があります。


なぜタイ人に人気なのか
◎仏教寺院への関心
タイ人の9割以上が仏教徒であり、寺院は生活に密着した存在です。清水寺、金閣寺、銀閣寺、伏見稲荷大社などの歴史的建造物は、タイ人にとって精神的な価値も持っています。観光庁「訪日外国人消費動向調査(2023年)」によると、タイ人は訪日旅行でも神社仏閣巡りが根強い人気を持っています。
◎日本らしい景観
赤い鳥居と自然景観が一体となった伏見稲荷大社、竹林の道(嵐山)、祇園の街並みなど、「視覚的に日本らしい」景観がSNS映えスポットとして人気が高くなっています。
◎着物体験・茶道体験
京都では着物レンタルと街歩き、茶道体験などの文化体験プログラムが充実しています。体験型観光への関心が高まっているタイ人にとって、魅力的なコンテンツです。
◎四季の美しさ
春の桜(哲学の道、円山公園)、秋の紅葉(嵐山、東福寺)など、四季折々の景観が楽しめます。タイには明確な四季が存在しないため、季節の変化を体感できることは大きな魅力となります。


京都は「日本文化の象徴」として、初回訪問者の必訪先です。一方で、リピーターは混雑を避けた早朝参拝、穴場スポット巡り、季節限定の特別拝観など、より深い体験を求める傾向があります。多言語対応(タイ語の案内表示やパンフレット)や、仏教文化の背景説明(タイ語)を充実させることで、さらなる満足度向上が期待できます。


出典:JNTO「タイ市場基礎データ」、観光庁「訪日外国人消費動向調査(2023年)」

https://www.jnto.go.jp/statistics/market-info/thailand/thailand02.pdf

https://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/syouhityousa.html

第5位:山梨県(訪問率15.4%)

訪問率・順位データ 山梨県は訪問率15.4%で第5位です。この数値は、富士山という圧倒的な観光資源の存在を反映しています。



なぜタイ人に人気なのか
◎富士山の圧倒的人気
タイ人にとって富士山は「日本の象徴」であり、訪日旅行における最重要目的地の一つです。
◎河口湖の人気
河口湖からの富士山の眺望、逆さ富士の撮影、温泉旅館での滞在などが人気コンテンツです。
◎レンタカー利用による周遊観光に最適
山梨県は公共交通機関が限られているため、レンタカー利用が推奨されます。タイは日本と同じ左側通行・右ハンドルであり、タイ人にとって運転しやすい環境です。東京からレンタカーで富士五湖エリアを周遊するルートが人気を集めています。
◎四季折々の景観
春の桜と富士山、夏の緑と湖、秋の紅葉と富士山、冬の雪景色と富士山など、季節ごとに異なる表情を楽しめます。


山梨県の訪問率15.4%という数値は、富士山という単一の強力な観光資源によって支えられています。一方で、富士山周辺には、富士急ハイランド、忍野八海、西湖いやしの里根場などの副次的観光スポットも存在し、滞在時間の延長に寄与しています。レンタカー利用者向けに、タイ語のドライブマップや、タイ語対応のカーナビ情報を充実させることが効果的です。


出典:JNTO「タイ市場基礎データ」

https://www.jnto.go.jp/statistics/market-info/thailand/thailand02.pdf

第6位:福岡県(訪問率12.5%)

訪問率・順位データ 福岡県は訪問率12.5%で第6位です。九州の玄関口として、また独自の都市文化・グルメで人気を集めています。



なぜタイ人に人気なのか
◎バンコクからの直行便
バンコクから福岡空港への直行便が運航されており、アクセスが良好です。福岡は九州観光の拠点として機能しています。
◎博多ラーメン・屋台文化
博多ラーメン(とんこつラーメン)は日本食を好むタイ人に人気が高くなっています。中洲の屋台文化も、タイの屋台文化と通じるものがあり、親しみやすくなっています。
◎ショッピング(天神・博多)
天神地区、キャナルシティ博多などのショッピングエリアが充実しています。免税対応店舗も多く、買い物需要に対応しています。
◎九州周遊の起点
福岡を起点に、長崎、熊本、大分(別府温泉)、鹿児島などへの周遊観光が可能です。レンタカーを利用した九州一周ルートも人気を集めています。



福岡県は「九州観光の入口」としての役割が大きいと言えます。福岡に到着後、レンタカーで九州各地を周遊するスタイルが増えています。また、福岡は東京や大阪と比べて混雑が少なく、「サバーイ(快適)」な旅行ができる点もタイ人に評価されています。


出典:JNTO「タイ市場基礎データ」、国土交通省北海道運輸局「タイ市場の最新動向と効果的なアプローチ手法」
https://www.jnto.go.jp/statistics/market-info/thailand/thailand02.pdf

https://wwwtb.mlit.go.jp/hokkaido/content/000357900.pdf

3. 注目の上昇エリア:北海道

過去の訪問先は東京、大阪、京都が中心である一方、次回訪問先として地方への関心が高まっています。


なぜタイ人に北海道が人気なのか

◎四季の変化(特に雪景色)
タイには雪が存在しないため、北海道の雪景色は非日常的な体験となります。冬の札幌(雪まつり)、旭川、富良野、函館などが人気を集めています。
◎さっぽろ雪まつりへの高い関心
さっぽろ雪まつり(毎年2月上旬開催)は、タイ人にとって関心の高いイベントです。雪像コンクールでは、タイのチームが2020年まで3年連続で優勝、2024年は準優勝という実績があり、タイ国内での認知度も高くなっています。
◎夏のラベンダー
7月~8月の富良野のラベンダー畑は、タイには存在しない景観として人気が高くなっています。紫色の花畑はSNS映えスポットとしても注目されています。
◎海産物・乳製品などの食の魅力
新鮮な海産物(カニ、ウニ、イクラ等)、ジンギスカン、乳製品(ソフトクリーム、チーズ等)など、北海道ならではの食が魅力となっています。
◎レンタカー利用による自由な旅行
北海道は公共交通機関が限られているため、レンタカー利用が推奨されます。タイ人のレンタカー利用が増加している現在、北海道は理想的な旅行先です。


北海道は実際の訪問率はまだ低い段階にあります。これは、東京・大阪・京都のゴールデンルートを経験した後、次のステップとして北海道が選ばれていることを示しています。今後、バンコク-札幌間の直行便の増便や、タイ語での情報発信強化により、訪問率の上昇が期待できます。



出典:JNTO「タイ市場基礎データ」

https://www.jnto.go.jp/statistics/market-info/thailand/thailand02.pdf

4. 人気エリアに共通する「成功の要因」分析

人気エリアに共通する成功要因を分析することで、今後の誘客戦略のヒントが得られます。以下、主要な要因を整理します。

アクセス性(空港・鉄道・LCC): 直行便の存在


東京(成田・羽田)、大阪(関西)、福岡、札幌、沖縄にはバンコクからの直行便が就航しています。特に2014年以降のLCC相次ぐ就航は、訪日旅行の低廉化を実現し、訪日客数の大幅増加に寄与しました。
観光庁「訪日外国人消費動向調査(2023年)」によると、観光目的の訪日タイ人のうち、帰国便にLCCを利用すると回答した人は21.0%となっています。LCCの存在が、中間所得層の訪日を可能にしています。
鉄道網の充実 日本の鉄道網は安全で時間に正確であることがタイ人によく知られています。JRパスや地方鉄道の活用により、広域周遊が容易になっています。スマートフォンの乗り換えアプリ(Google Maps、Yahoo!乗換案内等)により、言語の壁を越えた移動が実現しています。


アクセス性は訪問率を左右する最重要要因です。直行便の存在しないエリアは、鉄道やバスでのアクセス情報をタイ語で分かりやすく提供することが必須です。また、LCCの増便や新規就航は、地方観光地への訪問率を大きく向上させる可能性があります。


出典:観光庁「訪日外国人消費動向調査(2023年)」、JNTO「タイ市場基礎データ」

https://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/syouhityousa.html

https://www.jnto.go.jp/statistics/market-info/thailand/thailand02.pdf

まとめ

タイ人訪日観光客の都道府県別訪問率を見ると、東京・大阪・京都を中心としたゴールデンルートが依然として強い一方で、山梨や福岡、北海道といった地方エリアへの関心も着実に高まりつつあることが分かります。


今後の誘客においては、
  ・直行便・LCCの活用
  ・レンタカー周遊との親和性
  ・仏教文化や四季といった価値の言語化
  ・タイ語による情報発信の強化


が重要な鍵となります。タイ市場の特性を理解し、段階的な訪問動線を意識した施策を展開することで、地方への送客拡大と持続的な観光需要の創出が期待されます。

インバウンド対策ラボ(アビリブグループ)では、 SNSマーケティング支援アビリブインフルエンサー インバウンドプロモーション インバウンド広告のサービスなどのインバウンド対策支援を行っています。特にホテルや旅館など、宿泊・観光業の実績多数。これまでの知見を活かしたご提案をさせていただきますので、まずはお気軽にご相談ください。

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