
近年、タイからの訪日観光客は大きな変化を見せています。2019年と比べて、一人当たりの旅行支出は50.1%増加し、2023年時点では197,305円/人に達しています(出典:国土交通省 観光庁『2024年 年次報告書』)。2025年時点では207,073円/人に達しています(出典:国土交通省 観光庁『2025年1次速報』)
平均滞在日数も8.0泊と長期化傾向にあり、アジア圏からの旅行者の中でも、支出額・滞在時間の両面で高水準を記録しています。このような動きは、観光業界にとって非常に注目すべき変化であり、その背景と詳細な消費行動の分析が求められます。
また、こうした訪日意欲を支えているのが、タイにおける情報収集チャネルの進化です。2024年時点で、SNS利用率は総人口の68.3%(約4,910万人)に達し、YouTube(70.4%)、Facebook(61.7%)、InstagramやTikTokの利用も拡大しています。近年では、動画を活用した「疑似体験型の情報収集」が重視されており、YouTubeがSNSを上回って旅行の動機形成に影響を与えています。(出典:Workshift、DataReportal 2024年版)
この構造変化は、2019年以前のSNS・ブログ中心の情報収集から、映像体験重視へと明確なシフトを示しています。
1. タイ人観光客の支出構造

訪日タイ人の旅行支出において、買い物(31.6%)と宿泊(30.8%)が支出の中核を占めています。
特に買い物支出は62,322円/人と突出しており、日本製品への信頼やブランド志向、免税制度の浸透が影響しています。
宿泊費は60,734円/人で、長期滞在の傾向と比例した構造といえます。
次いで飲食費が45,362円(23.0%)、交通費が22,336円(11.3%)、娯楽・サービス費が6,234円(3.2%)となっています。
これらの傾向は、モノ消費とコト消費をバランスよく実現していることを示しており、他国の訪日観光客と比較しても多面的な支出構造を持っているといえます。
2. タイ人観光客の性別・年齢・滞在日数による消費パターン

訪日タイ人観光客の性別構成は女性が60.6%、男性が39.4%であり、女性主導の旅行傾向が見られます。年齢別では20〜39歳の若年〜中堅層が全体の約51%を占めており、SNSやインフルエンサーによる情報拡散が行動に強く影響している世代です。
滞在日数では、「2〜5日間」の滞在が最も多く46.9%を占めますが、全体の平均滞在日数は8.0泊と長く、リピーターを中心に一週間以上の滞在が一定層存在しています。
長期滞在志向が、宿泊・飲食・体験型サービスへの支出を押し上げていることがわかります。
3. 初回訪問とリピーターで異なるタイ人観光客の消費行動

初めて日本を訪れるタイ人観光客の旅行支出は172,075円/人であるのに対し、2回以上の訪問者は213,533円/人と約24%多く消費しています。
特に買い物支出に顕著な差があり、リピーターは初回訪問者より約18,000円多く消費しています。これは、日本の観光地や店舗に対する理解が深まり、「目的買い」が定着していることを示しています。
4. 旅行形態による支出の違いとその背景

タイ人訪日客の93.2%が観光・レジャー目的で来日しており、業務渡航は10%未満にとどまっています。旅行形態としては個人手配が主流で、パッケージツアーよりも自由な行動を好む傾向が強いです。個人旅行志向が高いため、地方都市やSNS映えするエリアへの訪問も多く、地域経済に新たな消費をもたらしています。また、長期滞在型の個人旅行者ほど、宿泊費と交通費の比率が高まる傾向にあります。特に関西・九州・北海道エリアへのリピーター訪問は、地方経済への波及効果が大きいことが報告されています。
5. 支出項目ごとの行動傾向
宿泊費に関しては、長期滞在と比例して支出額が高く、ラグジュアリー宿泊施設や温泉旅館などへの関心も高まっています。都市型ホテルに加えて、地方の一棟貸しや宿泊体験型施設も選択肢に入ってきており、今後は「体験付き宿泊商品」の市場が広がる可能性があります。
飲食費は45,362円(全体の23.0%)とアジア諸国平均と比べても高水準です。寿司・ラーメン・すき焼きなどの日本食が人気で、地域の特産料理への関心も強いです。近年はムスリムフレンドリーな飲食店も注目されており、文化的配慮が今後のキーになります。
娯楽・サービス費は6,234円と相対的には低いですが、文化体験・ライブイベント・アニメ施設などへの支出意欲は高まっており、「体験型消費」を目的とする旅行者が増加しています。
交通費は22,336円(11.3%)で、訪問先の広域化に伴って上昇傾向にあります。東京・大阪間の移動に加えて、富士山、北海道、九州などの地方エリア訪問が一般化しつつあり、JRパスや地方鉄道、LCCの利用者が増加しています。地方空港・交通網の整備が今後のタイ人誘客戦略において重要となります。
まとめ
タイ人観光客の訪日支出は一人当たり197,305円、平均滞在8.0泊というデータからも明らかなように、アジア市場の中でも高い経済的価値を持っています。特に個人旅行・長期滞在・リピーターというキーワードが中心であり、これらに対応する形での宿泊・飲食・体験・交通のサービス設計が重要です。
加えて、情報収集行動の変化により、SNSや動画コンテンツでの訴求が強く求められており、YouTubeやFacebookを軸としたプロモーション、Pantipなどのローカル掲示板との連動、口コミと動画拡散を組み合わせた統合型施策が有効です。
今後、高付加価値サービスの提案、長期滞在支援、地域分散誘導策などの展開により、タイ市場からの消費をさらに活性化できると考えられます。
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