
経済成長著しいベトナムは、今や日本のインバウンド市場において最も重要な国のひとつです。日本政府観光局(JNTO)によると、2025年2月には訪日ベトナム人数が過去最高を記録し、その勢いはさらに増しています。
効果的なインバウンド戦略を立てる上で欠かせないのが、ターゲット国の祝日や長期休暇を把握し、旅行需要が高まるタイミングを正確に知ることです。
本記事では、訪日ベトナム人のインバウンドカレンダーを解説します。
1. ベトナムの祝日・連休カレンダー
ベトナムの祝日は日本に比べて少ないですが、その分、連休は海外旅行に出かける絶好の機会と捉えられています。特に以下の4つの期間は、訪日旅行の需要が大きく高まるため注目が必要です。
※ベトナムの祝日は旧暦に基づくものが多く、毎年日付が変動します。
ここでは、2025年の祝日を例に紹介します。
休暇期間 | 日程 | 連休の日数 | 特徴・旅行需要 |
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休暇期間 | 日程 | 連休の日数 | 特徴・旅行需要 |
テト (旧正月) | 1月25日(土)~2月2日(日) | 9日間 | 一年で最も重要な休暇。伝統的には帰省が主だが、近年は海外で過ごす富裕層や若者が急増。長期滞在や高額消費が期待できる。 |
フン王命日 | 4月7日(月)を含む土日 | 3日間 | 南部解放記念日前の小規模な連休。国内や近距離のアジア旅行への関心が高まる時期。 |
南部解放記念日・労働者の日 | 4月30日(水)~5月4日(日)頃 | 5日間 | テトに次ぐ大型連休。日本のゴールデンウィークと重なり、気候も良いため、訪日旅行の絶好のタイミング。 |
建国記念日 | 8月30日(土)~9月2日(火) | 4日間 | 夏の終わりを楽しむ連休。日本の秋の観光シーズンの始まりと重なり、紅葉などを目当てとした旅行需要が見込まれる。 |
【休暇別】ベトナム人の過ごし方と海外旅行への意識
テト(旧正月):伝統と革新が共存する最大の旅行シーズン
一年で最も神聖な期間とされるテト(旧正月)は、本来、故郷に帰り家族や親戚と過ごすのが伝統的な過ごし方です。しかし、近年の経済発展に伴い、多くの人々が海外旅行に出かけるシーズンでもあります。
・ 家族旅行の増加:帰省の代わりに、家族全員で国内外へ旅行に出かける家庭が増えています。特に、都市部の富裕層や中間層においてこの傾向が顕著です。
・ 海外での年越し:日本や韓国、タイといった国々で旧正月を祝う特別感を求める人々が増加。日本の雪景色や温泉は、常夏のベトナムの人々にとって非常に魅力的です。この時期のプロモーションでは、非日常感を打ち出すと効果的です。
4月下旬~5月上旬:訪日旅行のゴールデンシーズン
南部解放記念日(4/30)と労働者の日(5/1)が連なるこの休暇は、
テトに次ぐ海外旅行のピークシーズンです。
・ 気候の良さと桜への憧れ:この時期は日本の気候が良く、桜シーズンの終盤とも重なるため、訪日旅行先としての人気が非常に高まります。
・ グループ・家族旅行が中心:気候の良いこの時期は、友人グループや家族連れでの旅行に最適です。テーマパーク、自然景観、ショッピングなどを組み合わせた周遊プランが好まれます。
9月上旬(建国記念日):秋の日本への誘い
建国記念日の連休は、夏の暑さが和らぎ、旅行しやすい気候となるため、
短期の海外旅行先として人気です。
・ 秋の魅力発信:日本の「秋」は、ベトナム人にとって魅力的なコンテンツです。紅葉、秋の味覚、過ごしやすい気候などをアピールすることで、旅行先の候補として強く意識させることができます。プロモーションは、休暇の1〜2ヶ月前から開始するのが良いでしょう。
夏休み(6月~8月):子供が主役のファミリー旅行
ベトナムの暦では夏期に祝日はありませんが、この期間は学生の夏休みにあたり、
家族旅行のメインシーズンです。
・ 子供向けの体験コンテンツ:ベトナムの親は子供の教育に熱心であり、「遊び」と「学び」を両立できる体験型コンテンツへの関心が高いです。自然体験、サイエンスミュージアム、キャラクター関連施設などは特に人気があります。
・ 避暑地としての日本:ベトナムの厳しい暑さから逃れる「避暑」も、旅行の重要な動機となります。北海道や東北、高地リゾートの涼しさや自然の豊かさを訴求するのも有効です。
2. 過去のデータから見るベトナム人の訪日傾向

過去の統計データを見ると、コロナ以前は訪日ベトナム人数の年間最初のピークは毎年4月に訪れていました。この時期はベトナムの祝日・連休と重ならないにもかかわらず、日本の「桜」が非常に強い集客力を持っていたことがわかります。
しかし、パンデミック以降の動向は変化しています。2023年は2月に訪日者数のピークが訪れ、2024年は3月、そして2025年は再び2月が最多となりました。特に2025年2月は過去最高の訪日ベトナム人数を記録し、従来の4月ピークを大きく上回る勢いを示しています。
この傾向には、ベトナムの旧正月(テト)休暇の影響や、冬~早春の航空運賃の割安さ、さらに冬ならではの富士山や温泉といった季節限定観光資源への関心の高まりが影響していると考えられます。
結論として考えられるのは、ベトナム人の訪日者における2月のピークは、比較的若い世代の旅行者が有利な条件を活かして訪れている可能性があるということです。一方で、桜のシーズンである4月は、旅行費用が高くなることから、経済的に余裕のある年配の旅行者が多く訪れる傾向があるのではないかと推察されます。
同様に、祝日がない10月頃も訪日需要が高まる傾向にあり、これは「紅葉」シーズンを目的とした旅行によるものと考えられます。
このように、ベトナムにはない日本の四季の美しい自然は観光客を強く魅了しており、特に春の桜や秋の紅葉は、祝日に関わらず大きなインバウンド需要が期待できます。
まとめ
ベトナムからのインバウンド需要を取り込むためには、彼らの旅行シーズンと最新のニーズを理解し、戦略的にアプローチすることが不可欠です。
1. 連休に合わせた早期プロモーション:テト、4月末〜5月、9月の大型連休の2〜3ヶ月前には、SNSやオンライン広告を通じた情報発信を強化しましょう。
2. 四季に合わせたプロモーション:桜や紅葉のシーズンなど特に自然が人気となる時期に名所やツアー等の情報発信は特に効果的です。
3. デジタルとリアルな口コミの活用:ベトナム語でのSNS発信やインフルエンサーの活用は必須です。同時に、訪れた観光客が満足し、良い口コミを発信してくれるような、質の高いサービスと言語対応を心がけましょう。
参考になる記事:
【インバウンドカレンダー徹底解説】訪日需要を最大化するための戦略ガイド
インバウンド対策ラボ(アビリブグループ)では、インバウンドプロモーション・インバウンド広告のサービスなどのインバウンド対策支援を行っています。特にホテルや旅館など、宿泊・観光業の実績多数。これまでの知見を活かしたご提案をさせていただきますので、まずはお気軽にご相談ください。