インバウンド対策ラボ(アビリブグループ)が発信する、インバウンドニュース

現在のページの位置
  1. トップページ
  2. インバウンドニュース
  3. 【市場調査】コロナ明けのインバウンド需要増加は予想されていた

【市場調査】コロナ明けのインバウンド需要増加は予想されていた

著者: インバウンド対策ラボ編集部

公開日:

更新日:

カテゴリー:

コラム

【市場調査】コロナ明けのインバウンド需要増加は予想されていた

 

 先日アップしました各国からの旅行需要の高まり(2023年夏前速報値)の続報ですが、6月の速報値でも引き続きインバウンド需要は上昇し、訪日外客数は2,073,300人(2019年同月比+72.0%)となりました。コロナ拡大により大幅に減少した2020年2月以降、初めて200万人突破です。
 実は、このようなコロナ明けのインバウンド需要増加は突然起こっているものではなく、コロナが明ける前からすでに予想されていたものでした。コロナという不測のウィルスがいつ力を落とすのか。こちらはなかなか予測不可能でしたが、この自粛期間が終わったらなにがしたいか。例えば、旅行をする気持ちはあるか、どこに行きたいか、というデータは各所で集積されていたのです。まずは、最新の訪日外国人旅行者の大まかなトレンドをご覧頂き、その後、コロナ禍の実施調査結果からインバウンド需要増加の予見を感じてみてください。そして最後に、2023年4~6月の訪日外国人旅行者の詳細から、コロナ禍の調査がどの程度未来(現状)を反映していたかを捉えてみてください。

各国・エリアからの訪日変動

 まずは、最新の各国・エリアからの訪日変動についてです。日本政府観光局(JINTO)の7月19日のプレスリリースより抜粋しました。

グラフ引用元:日本政府観光局(JNTO)「訪日外客統計(2023年6月推計値)」p.6
https://www.jnto.go.jp/statistics/data/20230719_monthly.pdf

 

 東アジア地域では、2019年の訪日数には少し及びませんが、台湾をはじめ増加がみられます。また、欧米豪中東地域では特に米国や豪州等において2019年同月比を超える回復を見せたことが今月の押し上げ要因となりました。

コロナ禍でも高まっていた日本旅行の需要

 では、今現在日本を訪れている外国人はいつ頃から日本旅行を計画していたのでしょうか。2020年6月、12月と2回にわたって行われたアジア、欧米豪旅行者の意向調査の結果をご紹介します。こちらは、日本政策投資銀行(以下、「DBJ」)と、日本交通公社(JTBF)が共同でコロナ収束後の旅行についてインターネットで行った調査です。

グラフ引用元:日本交通公社「DBJ・JTBF アジア・欧米豪訪日外国人旅行者の意向調査(第2回 新型コロナ影響度 特別調査)」p.10
https://www.jtb.or.jp/wp-content/uploads/2021/09/report-DBJ-JTBF-asiaeuro-survey-2021-covid19-2_.pdf

 

 ドーナツグラフの内側ドット柄が2020年6月の結果、外側が2020年12月の結果です。第1回調査時よりも第2回調査のほうが海外旅行需要は高く、コロナ収束後に海外旅行を希望する人々の熱の高まりがうかがえます。どのエリアでも8割以上の方が海外旅行を心待ちにしていたようです。
 次に、海外旅行先はどこにしたいか、というアンケートの結果です。第1位は嬉しいことに日本です。第1回調査、第2回調査ともに日本への渡航需要は高く、2回の調査結果を比較すると日本人気は上昇しているようにもみえます。

グラフ引用元:日本交通公社「DBJ・JTBF アジア・欧米豪訪日外国人旅行者の意向調査(第2回 新型コロナ影響度 特別調査)」p.13
https://www.jtb.or.jp/wp-content/uploads/2021/09/report-DBJ-JTBF-asiaeuro-survey-2021-covid19-2_.pdf

日本が海外旅行先に選ばれる理由

 海外旅行先として日本を選んだ理由については、次の2つの調査結果を示したグラフの赤い線に注目してみてください。「治安がいい」、「清潔だから」という項目が最も多く、日本社会のポジティブなイメージが結果に結びついたと考えられます。さらに、「食事が美味しいから」、「行きたい観光地や観光施設があるから」といった点でも高く評価されていることが分かります。美味しいレストランや行きたい観光地について、各国の旅行希望者がどんな形で情報収集しているかが気になるところです。

グラフ引用元:日本交通公社「DBJ・JTBF アジア・欧米豪訪日外国人旅行者の意向調査(第2回 新型コロナ影響度 特別調査)」p.14
https://www.jtb.or.jp/wp-content/uploads/2021/09/report-DBJ-JTBF-asiaeuro-survey-2021-covid19-2_.pdf

グラフ引用元:日本交通公社「DBJ・JTBF アジア・欧米豪訪日外国人旅行者の意向調査(第2回 新型コロナ影響度 特別調査)」p.15
https://www.jtb.or.jp/wp-content/uploads/2021/09/report-DBJ-JTBF-asiaeuro-survey-2021-covid19-2_.pdf

訪日外国人旅行者が日本旅行で体験したいこと

 訪日外国人旅行者が日本旅行で体験したいことは、ずばり「桜の鑑賞」、「自然や風景の見物」、「伝統的日本料理」だそうです。アジアと欧米豪居住者で求めることが若干違うようですが、どちらのエリアにも日本の自然や風景を魅力的に思う外国人が多くいるようです。

グラフ引用元:日本交通公社「DBJ・JTBF アジア・欧米豪訪日外国人旅行者の意向調査(第2回 新型コロナ影響度 特別調査)」p.21
https://www.jtb.or.jp/wp-content/uploads/2021/09/report-DBJ-JTBF-asiaeuro-survey-2021-covid19-2_.pdf

コロナ明けの訪日外国人旅行者の旅行支出や滞在期間の実態は?

 では、コロナ禍で高まった日本への旅行需要は現在どのような形としてあらわれているのでしょうか。

 訪日外国人旅行者の増加はそれの最たるものかと思いますが、旅行支出にも需要の高さが伺えます。例えば、訪日外国人1人当たりの旅行支出をみてみますと、2019年比で+32,0%という結果でした。1回の旅行予算が30%以上も増加し、1人当たり20万5千円と推計されており、日本旅行への期待値の高さや消費行動の活発さが伺えます。

グラフ引用元:観光庁「【訪日外国人消費動向調査】2023年4-6月期の全国調査結果(1字速報)の概要」p.3
https://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/content/001619995.pdf

 


 国籍・地域別にみると、英国(35万9千円)、中国(33万8千円)、オーストラリア(33万7千円)の 順で高いようです。

グラフ引用元:観光庁「【訪日外国人消費動向調査】2023年4-6月期の全国調査結果(1字速報)の概要」p.4
https://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/content/001619995.pdf

 
 観光・レジャー目的で訪れた外国人の費目別の金額をみてみましょう。
 まず、宿泊費の相場は約70,000円で平均滞在日数は7日間となります(対象の調査では入国日と出国日から滞在日数を算出)。1泊1人当たり9,765円となっておりますが、あくまで平均となりますのでホテルや旅館のカテゴリーによっても異なってくるかと思います。
 次に、コロナ禍の調査で旅行先に日本を選ぶ理由で多く支持された「食事の美味しさ」が反映されるであろう飲食費ですが、こちらもかなり高いことが分かります。特に欧米豪では宿泊費に次いで2番目に高い割合となりました。一方、アジア圏ではどの国も軒並み買物代が飲食費を上回っているようでした(韓国のみ数千円飲食費の方が多い)。また、アジアと欧米豪では、交通費を占める割合も多少違いがみられます。この項目は日本国内での交通費となりますが、欧米豪の方が若干高いです。単純に、滞在日数の長さの影響かもしれませんが、日本国内をよく移動している可能性も考えられます。
 最後に、費用別に支出の高い国をみると、宿泊費、交通費は英国、飲食費はフランス、娯楽等サービス費はオーストラリア、買物代は 中国がそれぞれ1位となりました。

アジアはリピーター、米国は初訪日の割合が高い

 次に、2023年4~6月の訪日外国人のこれまでの訪日回数についてです。

データ:観光庁「訪日外国人消費動向調査集計表(2023年4-6月期)【1次速報】」
資料:インバウンド対策ラボでグラフ・リスト化

 
 観光庁の訪日外国人消費動向調査によりますと、今回初めて日本に来日された外国人は全体の31.7%でした。7割近くがリピーターということになりますが、その中でもコロナ以降初来日となる訪日外国人が最も多くみられます。

データ:観光庁「訪日外国人消費動向調査集計表(2023年4-6月期)【1次速報】」
資料:インバウンド対策ラボでグラフ・リスト化

 
 国別にみますと、韓国・台湾・香港などは8割以上が複数回日本を訪れているリピーターであることがわかります。
 一方で、2019年対比で急激な増加をみせている米国からは6割以上が初訪日となりました。同じく急増がみられるシンガポールの初訪日客数は25.0%でした。

データ:観光庁「訪日外国人消費動向調査集計表(2023年4-6月期)【1次速報】」
資料:インバウンド対策ラボでグラフ・リスト化

 
 米国で初訪日観光客が多い明確な理由はわかりませんが、ひとつの要因に宿泊費が考えられます。6月の米国国内ホテルは、平均客室単価(ADR)が約2万2千円(US$158.40)であり、例えば、外国人からの人気も高い京都市内のホテルの5月の平均客室単価は約1万9千円と比較しても少し高い印象を受けます。あくまで推察ですが、コロナ禍の海外旅行への高まりと合わせ、米国内ホテルの価格が上昇傾向にあるなか、どうせならこの機会にお手頃な価格で泊まれそうな海外旅行にしてしまおう、という思考になる人も多いのかもしれません。

グラフ引用元:観光庁「【訪日外国人消費動向調査】2023年4-6月期の全国調査結果(1字速報)の概要」p.5
https://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/content/001619995.pd

 
 同じ日本国内の宿泊費の項目を比較しても、国ごとに違いがみられます。海外OTAなどで現地の相場を常にチェックしたり、いっそ登録してみて自社の客室単価に対する顧客の反応を伺いながら、各国の相場感覚を知ることも大事かもしれません。

まとめ

・コロナ禍でインバウンド需要の高まりは予見されていた
・日本の人気はコロナ禍でも上昇していた
・海外旅行希望者が日本を選ぶ理由は、清潔さ、治安のよさ、自然や風景の鑑賞
・コロナ明けの訪日外国客の1人当たりの旅行支出は2019年比32%で増加
・アジアはリピーター、米国は初訪日が多い傾向

 
 コロナという想定外なイベントが起きた際に、それに屈せず先を見通してユーザーのニーズを調査したり、それを発信している人や組織はたくさんいました。それらの情報をきちんと追って、現状に生かせているでしょうか。当方もサイト閲覧数などから各国からの関心やインバウンド需要の高まりを予想(過去記事)しておりました。
 コンサルティングをうまく利用して最新の市場情報を取り入れたり、ご自身で日々情報収集しながら、現在だけでなく近い未来の出来事を想定して安定したビジネスを展開していきたいですね。

 インバウンド対策ラボ(アビリブグループ)では、多言語サイト制作インバウンドプロモーション・インバウンドメディア掲載など各種インバウンド対策支援を行っています。
 特にホテル旅館など宿泊・観光業の実績多数。これまでの知見を活かしたご提案をさせていただきます。
 まずはお気軽にご相談ください!

インバウンド対策で課題をお抱えの企業・施設様はお気軽にご相談ください。